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あらすじ

近頃３時間以上ある映画は珍しい。それだけで敬遠してしまう人もいるのではないか。安藤サクラ演じる主人公の介護ヘルパーサワは、訪問先で火事騒ぎに巻き込まれ職場も住居も失ってしまう。映画はサワが津川雅彦演じる元学校教師のような（職業がさだかには描かれていない）年寄の家に、おしかけヘルパーとして居座る話を中心に、前後に出会う人たちとのエピソードが可笑しく、ちょっと悲しく積み重さなれていく。一種のロードムービーでもある。安藤サクラは時にアコギに、時に暴力的に、そして優しい顔を見せる。「日本にも、こんな凄い女優がいたんだ」と初めて彼女を見た僕はその七変化ぶりに正直驚ろいた。柄本明との取っ組み合いのシーンなどもド迫力で凄い女優根性を感じさせる。他の出演者で出色なのは坂田利夫が演じる一人暮らしの老人だ。過去に自動車整備士をしていたのだが、今は自転車を盗んだり、タイヤをパンクさせるなどの迷惑行為を繰り返している。それを見たサワに脅され家に上がり込まれるのだが、頑固で愚かで小心者のどうしようもないような年寄がだんだん心を許して、ついには宝物の「いすゞ・117クーペ」を彼女に渡してしまう。そんな孤独な老人役を見事に演じていた。ラスト近く117クーペから「サワの分、遺産１００万円」を見つけたサワが号泣するシーンには泣かされた。「100円の恋」と同じくこれは安藤サクラあっての映画である。３時間は決して長くはなかった。実母の安藤和津がフードスタイリストをしたという食事はどれも美味そうだったなあ。